みなさんこんにちは。
今回は、小動物の困った症状についてのお話です。
小動物たちの中でも、牧草を食べる草食の動物たちは、普通このようなキレイな歯が生えています。
しかし大きくあくびをしない限り、奥まではよく見えません・・・
この歯は生きていくうえでとても大事なのですが、実は意外と病気に繋がる原因になるのもこの歯なんです。
それが、ウサギやモルモット、ジリス、ハムスターなど小動物全般、最も多い疾患の一つ、不正咬合。
ヒトを含め、あらゆる生き物を悩ませる不正咬合ですが、小動物そして鳥も不正咬合になることがあるのです。
※今回分かりやすく説明するため、本来切歯と呼ばれる前の二本の歯を“前歯”と表記いたします。
不正咬合とは?
まず不正咬合とは、本来上下でうまく噛み合わさっているはずの歯が、何らかの原因で噛み合わさっていない状態のことを指します。ふせいこうごうと読みます。
こちらの主役である小動物、鳥に関しても不正咬合が原因で起こる疾患に悩まされることは多いです。
遺伝による先天的な不正咬合と、飼育環境による後天的な不正咬合があり、早めに気づいてあげれば、十分に対策をとることができます。
順に説明させていただきますね。
ウサギ、モルモット、ジリス…なりやすい小動物は?
小動物ですと多く聞くのはウサギ、モルモット、リチャードソンジリス、プレーリードッグ、デグーあたりの牧草を主食とするコたちです。
これらの動物は、前歯の悩みが最も多いですが、人でいう奥歯、いわゆる臼歯でも不正咬合が起こるため、歯の悩みの多いペットと言えます。
ハムスターなど小型の齧歯類も不正咬合になりますが、小さすぎて非常に分かりづらいのと、重症化する前に高齢になり対策が取りづらいためか、あまり悩み相談としては出てきません。
鳥の場合はセキセイインコ、オカメインコなどの手乗りインコはもちろんのこと、小型のフィンチ類でも見かけるので特にどの種類が多い、というのはないように思います。
ちなみに鳥の場合は上下のクチバシにのみ症状が現れます。
不正咬合の原因
なぜ不正咬合になってしまうのか?原因はいくつか考えられます。
順にみていきましょう。
原因①先天性のもの
遺伝的に不正咬合がでてしまう場合があります。
ペットショップでベビーを購入する段階ではまだ分からないことがほとんどです。
ズレが大きいと産まれて間もなく分かる場合もあります。
おかしいな?と思ったら悪化する前に対策をとりましょう。
原因②(草食動物の場合)チモシー牧草を食べていない。
草食性の小動物たちの主食は本来牧草です。
飛び散りが少なく、よく食べるペレットタイプの餌が便利だからと、そればかりを与えていると不正咬合の原因になってしまいます。
草食の動物にはたくさんのチモシー牧草を与えるようにしましょう。
もし与えても食べない場合は、まず嗜好性の高い柔らかいものから与えてみたり、商品を替えてみましょう。
原因③ケージをかじる癖がある
特に小動物に多い原因です。
ケージの金網をかじってガンガンガンガン・・・実はうるさいだけでなく、歯にとても悪い行動なのです。歯の特定の場所に金属の振動と力が入ることでどんどんバランスが崩れていきます。歯が折れてしまうことも・・・
このケージかじりは飼い主さんの対応によってやめさせることもできるし、酷くなることもあります。
詳しくは後半で説明させていただきます。
原因④歯が折れたことによるもの
もともと不正咬合でなくても、何らかの原因で前歯が二本あるうちの片方だけ折れてしまったりすると、生えてくるまでの間、下の歯がうまく噛みあわないことになります。
そうなれば下の歯も片方伸びすぎてしまい、不正咬合の原因になってしまいます。
もし歯が折れてしまったら、ペットが元気そうでもエキゾチックアニマルに強い動物病院に連れて行きましょう。そして今後のアドバイスを受けましょう。
原因⑤(鳥の場合)クチバシの病気によるもの
セキセイインコに多い原因ですが、疥癬というクチバシに症状の出る病気になると、綺麗だったクチバシがどんどん変形していきます。
放っておけば餌を全く食べられなくなりますので、脚や鼻のあたりがカサカサしてきたな、と思ったら早めに病院に連れて行き、治療しましょう。
不正咬合の症状
不正咬合になると歯やクチバシがずれるだけではなく、体にも変化が出てしまいます。
たかが歯、と思っているととても重い症状になります。
どんな症状が出てくるのかを先に知っておくことで、不正咬合に早く気づくことができます。
これから、初期症状から順に説明させていただきます
症状①よだれが多くなる
歯が伸びすぎればうまく口を閉じることができなくなり、よだれが出るようになります。
歯の問題も気になりますが、よだれで常に毛が濡れていると、不衛生になり、皮膚炎のリスクも高まります。
症状②毛並みが悪くなる
うまく舌や口を使えなくなるので、毛づくろい、鳥なら羽繕いができなくなります。
体が不衛生になれば、よだれの時と同じく皮膚炎のリスクが高まります。
飼育しているコが歳をとっているわけでもないのに、最近毛並みが悪い、または毛づくろいが上手くできていないようなら、要注意です。
症状③体重が減る
歯がうまく噛みあっていなければ、当然餌の減りにも影響が出てきます。
特にウサギやモルモットは空腹状態が続くと腸の動きが停滞してしまい、重篤な状態になることがあります。
特に何も思い当たる原因もないのに最近餌の減りが悪いな・・・と感じたら念のため動物病院へ連れて行きましょう。
症状④涙が出るようになる
片方の目だけ涙が出るようになれば不正咬合を疑ってください。
前歯だけでなく、奥歯も伸び続けるウサギに多いのですが、伸びすぎた歯が内側から涙腺を刺激して、涙が出るようになってしまいます。
もちろん濡れた場所は汚れがたまりやすくなりますので皮膚炎のリスクも高まります。
症状⑤顔が腫れる
一見歯とは関係がないように思える頬の腫れですが、不正咬合によって、伸びすぎたり尖ってしまった歯が、頬の内側を傷つけてしまうことによって起こる症状のひとつなのです。
不正咬合がだいぶ悪化してしまった状態で、放っておけば頬に穴が空くことも。ここまでくると、かなり危険な状態になります。
普段からペットの定期検診に行く、体重や餌を量る、スキンシップをとるなどして体の異変にすぐ気づけるようにしておきたいですね。特に小動物は歯がよく見えないので、気づいた時には症状が進んでいることもあります。
不正咬合になってしまったら?
避けて通りたい不正咬合ですが、チモシー牧草を食べていても、ケージをかじらなくても、不正咬合になってしまうことはあります。
では、万が一不正咬合の疑いがあった場合、どうすれば良いのでしょうか?
まずは動物病院へ!
不正咬合であることが特定できるのは動物病院だけです。
特に小動物は飼い主さんから見えるのは前歯だけ。奥歯を見ることはかなり困難です。
また、不正咬合は歯の治療、または傷つけた頬の治療になりますので、自宅ではどうにもなりません。
自分で歯をカットしてやるのは非常に危険です。
小動物や鳥に詳しい病院でなければなりませんが、探して連れていきましょう。
病院に行った後の自宅でのケア
不正咬合の困ったところは、病院で歯をカットしてもらい、治療が終われば終了!ではないということ。
先天性のものであれば、定期的に歯やクチバシをカットする必要がありますし、後天性のものであっても、一度ズレた歯がもと通りきっちり噛みあうようになるには時間がかかります。
小動物の歯のカットはかなり難しいため、病院に通うことになりますが、一部の鳥は自宅でクチバシをカットすることが可能です。
もちろん病院で毎回やってもらうのが安心ですが、通えない方は病院でやり方を教わってみましょう。
飼育環境を見直そう
後天的な原因で不正咬合になったコには最も重要なことです。
先天的なコでも症状を早めないために飼育環境を見直しましょう。
いくら一時的に歯をカットしてもらっても、不正咬合になった原因を取り除かなければ、すぐに元に戻ってしまいます。
ケージをかじらないようにする
ケージをかじるのは理由があってやっていることが多いです。
最も飼い主を困らせる行動ですが、対応を学ぶことで、できる限り防ぐことができます。
かじるものをケージに入れる
単になにかかじりたいだけであれば、かじるグッズを入れることで解決する場合もあります。
色々な種類がありますので、試してみてはいかがでしょうか?
ケージの金網に取り付けるタイプもありますよ♪
かじるのをやめさせる
これは少々難しく、時間がかかるのですが、ケージをかじることで自分の欲求を通しているコに使える方法です。(単なるストレス解消でやっているコには効果がありません)
ケージをかじって音を立てることで餌がもらえたり、外に出してもらえると思ってやっていることがあるため、飼い主が気を付けてやるのです。
方法は我慢する!だけです。
ケージをガンガンやられてうるさいから大人しくさせるためにおやつを与えたりケージから出していると、ペットはすぐにそれを覚えます。
なのでどんなにうるさくされても静かになるまで無視するようにしてください。
絶対に途中で挫折しないようにしてください。
ガンガン音が酷くなってからこちらが反応すれば、「あ、これだけ大きな音を出してガンガンやればいいんだ!」と新たに勘違いさせてしまいます。
時間はかかりますが、ガンガンやっても意味がないんだと分かれば、かじることをしなくなり、ペットにも飼い主にも大きなメリットとなるでしょう。
かじることのできないケージに変える
しつけしている時間はないし、かじり木も効果がない、でもできるだけ早くケージかじりをやめてほしい!そんな方はケージを変えてしまいましょう。
ウサギなら、金網のマス目の細かいケージに変えるのが有効です。
↑こちらのケージのマス目は3㎝四方です。ウサギのことを考えてつくられているケージではありますが、飼育用品も取り付けやすいマス目のサイズになっています。
↑こちらのケージのマス目は2cm四方です。ここまで狭ければ、ウサギが鼻先を突っ込んでかじるのも防ぐことができます。飼育用品の取り付けがちょっと難しくなるので注意しましょう。
ウサギよりも小型の小動物なら金網タイプのケージを思い切ってやめて、衣装ケースや水槽に変えてしまいましょう。
このように金網の少ないケージもありますし、衣装ケースも使えます。全面金網のケージより通気性が悪くなるため、夏は風通しのよい場所に置いたり、エアコンをかけるなどしてケージ内の空気がこもらないようにしてやりましょう。
餌を見直す
牧草が主食である小動物には、チモシー牧草をしっかり与えましょう。
一見栄養もなく固そうな枯草のような見た目ですが、もともと自然界で弱い立場である小型の草食動物は、そのような草を常に食べることによって栄養を摂取できる体になっています。
より強い動物が柔らかく栄養のある草を食べます。
なので歯の構造も、固い歯をすり潰すようにできています。
飼育下でも同じようなものを与えないと、歯が擦り減らなくなるため不正咬合になるのです。
小さな頃からペレットしか与えていない場合は時間がかかりますが、チモシー牧草をしっかり与えてください。
その際、短くてパラパラとした敷牧草ではなく、長くて固い、食べる用の牧草を選んでください。
市販で牧草を入れる容器がありますので、それにチモシー牧草を入れてケージ入れてあげてください。
まとめ
いかがでしたか?
うちのコ不正咬合かも?と思われた方、ケージをガンガンやるから不正咬合が心配な方、参考にしていただければ幸いです。
不正咬合は放っておけばおくほど悪化していきます。
逆に原因を取り除き、定期的に体におかしいところがないかチェックしてやれば、先天性のコも不正咬合とうまくつきあっていくことも可能です。
できるだけ早く気づいてあげられるようにしていきたいですね。
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